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【英国一家、日本を食べる】日本食と伝統的フランス料理の比較

著者は、日本旅行をする際に、どうしても懐石料理を食べたいと思っていたらしい。本書の11章では、懐石を食べに行ったエピソードが記述されている。伺ったお店は、京都の菊乃井だ。

 

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料理の描写も大変興味深かったが、料理長の村田氏にインタビューしたくだりが一層興味深かった。村田氏は、フランスに修行に行っていた事があり、フランス料理と日本料理を比較しているくだりがある。

 

「僕は、日本とフランスの料理の違いはこういうことやと思います。日本料理では、僕らは食材は神様からの贈り物やと思うて、手を加えすぎんようにします。たとえば大根は、ありのままの姿形が最高やと考えるんです。僕に言わせれば、フランスのシェフは往々にして素材を変えてしまいたいと思っている。素材に自分ならではの個性を与えようとします」 

 

日本料理は、素材をありのままに、一方、フランス料理は、それらをコントロールするところに力点があるような、捉え方をしているようだ。なんだか、論理を解明し、ものごとを制御しようと奮闘してきたここ数世紀の科学観との対比のようで面白い。

 

このように続く。

 

「若いときは、あらゆる食材に『味をつける』ことが僕の仕事やと思うてました。でも今では、そのアプローチはおこがましいんやないかとわかってきました。『食材が本来持っている味を引き出す』のが僕らの本当の仕事じゃないかと考えるようになりました。」

 

日本と欧米の料理の基本的な違いについて、別の表現でも言及している。

 

 「オードキュイジーヌでは、異なる素材の風味を込み入ったやり方で加えたり重ねたりします。けど日本では、とりわけ京都では、主に野菜を中心に料理しますが、その目的は、それぞれの素材の、たとえば苦味とか、あまり好まれない風味を抑えるようにして、素材の本質的な味を引き出すことにあります。日本料理は、引き算の料理なんです」

 

伝統的なフランス料理と日本料理の比較において、足し算と引き算、ありのままと制御の対比は、何となくだが、そんな気もしなくはないと感じる。著者も、ル・コルドン・ブルーで伝統的なフランス料理を学ぶ中で、フランス人は何でもかんでも、素材を自分たちの色に染めるような調理をする、といったことに言及するくだりが、『英国人、フランスを食べる』の中であった。

 

ただ、ここでモラキュラー・キュイジーヌと日本料理の比較となると、ちょっとこの足し算と引き算が何を指しているか、ちょっと分からなくなってくる。

そんなくだりが、本書の中でもあったけど、長くなったので次回書くことにしよう。

 

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